クーリングオフと探偵の契約について

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クーリングオフ

<ネット講座-2012.09.05>
探偵業者が事務所やお客様(個人)の自宅以外で契約する場合にはクーリングオフ対応契約書が必要となります。

契約とクーリングオフ制度

改正前の「特定商取引法」では消費者取引に関して、規制の対象となる商品・権利・役務(サービス)は政令で指定するものに限定されていました。 
しかし、2008年の特定商取引法の改正により、政令指定商品制度が撤廃され、原則全ての業種にクーリングオフが適用されることになりました。

探偵業を営む者にとって、クーリングオフと特に関係があるのは、従来ではよくあるケースでしたが、お客様に指定された場所(自宅以外の喫茶店やホテルのロビーなど)で待ち合わせをし契約を行うと、訪問販売に該当しクーリングオフの適用を受けるという事になります。

但し、店舗や事務所以外での契約であっても、消費者にとって不意打ちでない場合や外国で契約した場合にはクーリングオフの適用はありません。

主なものとしては下記のものがあります。

クーリングオフの適用が無いもの
  • 事業者間取引の場合
  • 外国で行った訪問販売取引
  • 消費者が自宅で契約するために事業者を呼んだ場合
  • 会社などがその従業員に対して行った場合
  • 過去に取引の経験がある場合(御用聞き販売など)
  • 店舗を持つ業者との取引で1年間に2回以上、無店舗の業者との取引で1年に3回以上の取引がある場合
  • 他の法令で消費者の利益を保護することができる等と認められるもの
  • 契約締結後すみやかに提供されない場合には、その提供を受けるものの利益を著しく害するおそれがある役務(サービス)の提供

この中で、「他の法令で消費者の利益を保護することができる等と認められるもの」の規定がありますが、これは、「旅行業法」「保険業法」「銀行法」「貸金業法」「金融商品取引法」「弁護士法」「司法書士法」「行政書士法」など多くの適用になっている法律があり、適用除外となっている業種があります。

<除外となっている趣旨>

消費者取引の適正化という観点から、取引の適正化を図るための規制を設け、違反した場合には、その法律を所管する官庁が行政処分をしたり、場合によっては刑事罰することができるとなっているものは、そちらの業法によって規制すればよく、さらに特定商取引法で二重に規制する必要はないという趣旨からです。

  • 特商法第2章第2節から第4節までの規定の全面的適用除外が措置されており(法第26 条第1項第8号)、同号ニにおいて、適用除外される他法の対象商品や役務が、特定商取引に関する法律施行令(昭和51年政令第295号。以下「施行令」という。)により具体的に定められることとなっています。

探偵業務とクーリングオフ

探偵業については、何故か、「取引の適正化を図るための規制を設け、違反した場合には監督官庁が行政処分をしたり、場合によっては刑事罰することができる」という条件は備わっているものの、さらに特定商取引法で二重に規制されている状態となっています(2012.09現在)。

なお、2008年の特定商取引法の改正以前は、興信所や探偵事務所が行う調査の契約については、特定商取引法の指定役務に該当せず、特定商取引法の適用はありませんでした。

また、契約締結後すみやかに提供されない場合には、その提供を受けるものの利益を著しく害するおそれがある役務(サービス)の提供とされているものには、下記の事業が指定されていますが、探偵業は除かれています。

  • 電気・ガス・熱の供給
  • 葬儀のための祭壇の貸与その他の便益の提供

そもそも探偵業務は基本的には、法人への営業を除いて、業者が個人の自宅へ個別訪問し営業を行うという形式は、一般には、取られていませんでした。 調査を行う必要のある方の要望に基づいて、探偵業者の事務所や消費者の自宅以外(消費者にとって利便性のある場所など)で待ち合わせを行い、契約を行っていたケースも多くありました。

また、探偵業ではお客様からすぐに調査してほしいという要望も多くあったのですが、家庭内の事情で自宅での契約が憚られる方も多く、このような場合でも事務所に来て頂かないことにはクーリングオフの対象となってしまう事になり、不便をおかけする事態となってしまっています。

クーリングオフ対応契約書

探偵業者が消費者と契約をするときに、特定商取引法の指定する「訪問販売」に該当するときには、クーリングオフ対応の契約書が必要となります。

日本探偵業協会では、これに対応した契約書の販売も行っております。

クーリングオフ対応契約書

訪問販売に対する規制としては次のものがあります。
【行政規制】

(1) 事業者の氏名等の明示(法第3条)
事業者は、訪問販売を行うときには、勧誘に先立って、消費者に対して以下のことを告げなければなりません。

事業者の氏名(名称)
契約の締結について勧誘をする目的であること
販売しようとする商品(権利、役務)の種類
 

(2) 再勧誘の禁止等(法第3条の2)
事業者は、訪問販売を行うときには、勧誘に先立って消費者に勧誘を受ける意思があることを確認するように、努めなければなりません。
消費者が契約締結の意思がないことを示したときには、その訪問時においてそのまま勧誘を継続すること、その後改めて訪問して勧誘することが禁止されています。

 

(3) 書面の交付(法第4条、法第5条)
事業者は、契約の申し込みを受けたときや契約を結んだときには、以下の事項を記載した書面を消費者に渡さなければなりません。

  • 商品(権利、役務)の種類
  • 販売価格(役務の対価)
  • 代金(対価)の支払い時期、方法
  • 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
  • 契約の申し込みの撤回(契約の解除)に関する事項
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名
  • 契約の締結を担当した者の氏名
  • 契約の締結の年月日
  • 商品名、商品の商標または製造業者名
  • 商品の型式
  • 商品の数量
  • 商品に隠れた瑕疵(一見しただけではわからない不具合)があった場合、販売業者の責任についての定めがあるときには、その内容
  • 契約の解除に関する定めがあるときには、その内容
  • そのほか特約があるときには、その内容
  • このほか消費者に対する注意事項として、書面をよく読むべきことを、赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。また、クーリング・オフの事項についても赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。さらに、書面の字の大きさは8ポイント(官報の字の大きさ)以上であることが必要です。
探偵業法に基づく契約書の記載事項とクーリングオフ対応の法定書面の記載事項の対比

探偵業の契約とクーリングオフ

なお、クーリングオフの法定書面(契約書)と消費者に対して書面をよく読むべき旨とクーリンクオフの事項は、当該契約書と一体のものであることを、消費者がわかるようにして渡さなければなりません。

クーリングオフの時効とは

書面受領日から8日間(対象により変わります)は書面により、撤回・解除ができること、その効力は書面を発した日に発生すること、違約金等を請求できないこと、既払金は速やかに返還することなどを、赤枠・赤字・8ポイント以上の活字で記載しなければならない(省令5条) とされています。

※なお、2022年6月より改正施行された特定商取引法により、クーリングオフの行使では従来からの書面(はがきや内容証明郵便)による方法だけでなく、電磁的記録による手段(電子メールやFAXなど)によっても可能となっています。

仮に、書面が交付されたが、記載事項に不備がある場合、判例では、記載事項のうち重要な事項が記載されていない書面が交付された事案については、クーリングオフの期間は進行しないといしています。注意してください。

クーリングオフと罰則

ご存知の通り、違反した業者は業務停止命令などの行政処分や刑事罰の対象となっています。下記は調査契約(訪問販売に該当するケース)とクーリングオフなどに関する主なものです。

  1. 契約締結の勧誘に際し、又は契約の解除を妨げるため、契約に関する重要事項の不実の告知(虚偽説明)、故意の不告知(特定商取引法第6条1項、2項)の場合は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、又はその併科
  2. 訪問販売に係る書面の不交付、記載の不備、虚偽記載の場合は、100万円の罰金
  3. 改善指示処分に違反した場合は100万円の罰金、業務停止命令に違反した場合は2年以下の懲役又は300万円以下の罰金、又はその併科
  4. 主務大臣は取引の公正及び消費者の利益が著しく害されるおそれがあると認めた時又は指示に従わない時は。1年以内の期間に限り、業務の全部又は一部を停止することが出来ます。また、業務停止命令は公表する義務があります。
  5. 何人も主務大臣又は都道府県知事に対して、取引の公正及び消費者の利益が著しく害されるおそれがあると認めた時は、その旨を書面により申出て、適当な措置をとるべきことを求めることが出来ます。

経済産業省のホームページにも相談事例と解説がありましたので紹介しておきます。

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